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書籍紹介

シャーロック・ホームズからの言葉 ――名せりふで読むホームズ全作品

「人は誰もが小さな不滅の火花を内に秘めている」 ――格差と不安の時代から語りかける名探偵ホームズのせりふを通して全作品を紹介。
著者 諸兄邦香〔著〕
刊行日 2010年11月26日
ISBN 978-4-327-48157-5
Cコード 0097
NDCコード 937
体裁 四六判 並製 280頁
定価 定価1,760円(本体1,600円+税10%)

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内容紹介
 「人は誰もが小さな不滅の火花を自分の内に秘めている」「自分の失敗を語るのに躊躇はしない」「忍耐力のある者が存在すること、それ自体が、忍耐力のない世の中において、なにより貴重な教訓となる」「学校は灯台だ、未来を照らす灯し火だ」
 ―― 名探偵シャーロック・ホームズが口にしたせりふには今の日本人が読んでも共感できるものが少なくない。ビクトリア朝末期のイギリスは伝統的な価値観が廃れ、貧富の差が拡大し、世の中には「煩悶と悲嘆と哀願の声」が満ちあふれた。頻発する戦争と慢性的な不景気の中、斜陽化する大英帝国に漠然とした不安が生まれ、確たる将来が見えない自信喪失の時代。その中で自身も波乱に満ちた生涯を送った作家ドイルが、生きるのに必要な知恵と勇気、さらには他者に対する寛容や博愛の精神を込めて書いたホームズの名せりふを全60作品の原文から引用し、現代も輝きを失わないその魅力を語る。
 
<著者紹介>
諸兄 邦香 (もろえ くにか)
1963年、東京に生まれる。証券会社を退職して著述・翻訳業。辞典や学習書の執筆を手がける。東京大学法学部卒。本名は田中立恒(たなか・りつこう)。シャーロック・ホームズ関連書に「シャーロック・ホームズ 大人の楽しみ方」(アーク出版、2006年)。同オーディオブック版(パンローリング、2009年)。
目次
はじめに
  
序 章  人は誰もが小さな不滅の火花を、自分の内に秘めている
  
第一章 『緋色の研究』
 お互いの欠点を知っておくのがよい。
 ぼくほどよく勉強し、才能に恵まれた者はいない。
 自分の失敗を語るのに躊躇はしない。
 事実が一貫した推理に合致しないときには、必然的に他の解釈が可能だということだ。
 不思議なことと、不可解なことを混同するのは誤りである。
 世の中、実際になにをしたのかではなく、なにかをしたと皆に信じてもらうことが重要だ。
  
第二章 『四人の署名』
 仕事それ自体、すなわち自分の特殊な能力を発揮する場を得る喜びこそが、最高の報酬だ。
 ぼくは憶測でものをいわないことにしている。
 能力を発揮する場がないのに、どうやって能力を活用するのかい。
 最も重要なのは、個人的な特質に惑わされて判断を誤らせないことだ。
 ぼくは例外をもうけない。
 この事件はすでに解決したも同然だが、自信過剰で失敗するのは禁物だ。
 幸運を活用しないのは、怠惰そのものである。
 なにごとも当然のことだと決めつけてはならない。
  
第三章 『シャーロック・ホームズの冒険』(短編集)
 判断材料がないのに、推論するのは禁物だ。 「ボヘミアの醜聞」
 解説したのは失敗だった。 「赤毛連盟」
 ぼくの人生は、平凡な生活から逃れようとする努力の連続だ。 「赤毛連盟」
 平凡なものほど不自然なものはない。 「同一人物(花婿失踪事件)」
 そのことは、もうくよくよ考えないようにしなさい。 「同一人物」
 全体の印象を信じてはならない、細部に注意を集中させるんだ。 「同一人物」
 明白な事実ほどあてにならないものはない。 「ボスコム谷」 
 なにゆえに運命は哀れでか弱き者たちに、かような悪戯をするのだろう。 「ボスコム谷」
 窮地を脱するには、気力あるのみだ。 「オレンジの種五つ」
 確かにつまらない感情の問題だが、ぼくの誇りは傷ついた。 「オレンジの種五つ」
 話相手の存在がぼくには重要だ。 「唇のねじれた男」
 なにが賢明なのかを悟るのに時間がかかってしまったが、なにも悟らないよりはましだ。 「唇のねじれた男」
 推理に臆病は禁物だ。 「青い紅玉」
 頭のよい者が悪事に知恵をしぼれば、事態は最悪となる。 「まだらの紐」
 経験は間接的に価値のあるものだ。 「技師の親指」
 社交の場とは人を退屈させるか、うそつきにするかのいずれかだ。 「未婚の貴族(花嫁失踪事件)」
 もしもやましいことがあるならば、うそのいい訳でも考えそうなものではないか。 「緑柱石の宝冠」
 彼女は自分だけが彼の心をつかんだと、舞い上がってしまった。 「緑柱石の宝冠」
 給料がよい、よすぎますね。それが不安なのです。 「ぶな屋敷」
 いかなる危険なのかがはっきりすれば、もはや危険だとはいえなくなる。 「ぶな屋敷」
 まずは子供を研究することで、その親の性向を洞察できたことがたびたびある。 「ぶな屋敷」
  
第四章 『シャーロック・ホームズの思い出』(短編集)
 ひとつの推理が正しければ、必ずや他にも正しい推理が導き出される。 「白銀号」
 不眠は働くよりも遊ぶよりも、人の神経を悩ますものだ。 「黄色い顔」
 いかなる事実でも、漠然とした疑惑よりはましである。 「黄色い顔」
 一連のできごとをもう一度聞くのは、自分にとっても有益だ。 「株屋の店員」
 彼はほとんどの面でぼくとは対照的だったが、いくぶんは共通点もあった。 「グロリア・スコット号」
 仕事が順調になるまで、ぼくが最初はどんなに困っていたか、きみには理解できないだろう。 「マスグレーブ家の儀式」
 他人が失敗したことも、自分ならば成功すると信じて疑わなかった。 「マスグレーブ家の儀式」
 なにごとも調べてみるのがよい。調査したのは無駄でなかった。 「ライゲートの大地主」
 多くの事実の中から、偶然と必然を識別することが重要だ。 「ライゲートの大地主」
 決して先入観をもたず、いかなるものであれ、事実の導いた結論には従うことにしている。 「ライゲートの大地主」
 初歩的なことだよ。 「背中の曲がった男」
 正義か否かを確かめるのは、万人に共通のビジネスである。 「背中の曲がった男」
 楯で守れずとも、正義の剣で復讐はなされるのだ。 「入院患者」
 謙遜を美徳だとは思わない。 「ギリシャ語通訳」
 自分が正しいことを示すよりも、誤っていると思われた方がよい。 「ギリシャ語通訳」
 バラの花は余分なものだ。 「海軍条約」
 学校は灯台だ、未来を照らす灯し火だ。 「海軍条約」
 可能性があるものを排除してはならない。 「海軍条約」
 この事件で最も困難なのは、証拠が多すぎたことだった。 「海軍条約」
 身近に迫った危険を無視するのは、勇敢ではなく愚鈍というものだ。 「最後の事件」
 ぼくの人生はまんざら無益でもなかった。 「最後の事件」
  
第五章 『バスカービル家の犬』
 きみ自身は輝かないが、他人を輝かせることはできそうだ。
 することが裏目に出るほど、人は発奮するものだ。
 人は常に望んだとおりの成功を収めるとは限らない。
 自分を見失うほどに動揺したはずなのに、よくぞ平静さを取り戻したね。
 おおかたの知能犯と同じく、彼も自らの知能を過信するだろう。
  
第六章 『シャーロック・ホームズの帰還』(短編集)
 仕事こそが悲しみを癒す特効薬だ。 「空き家」
 いつもながらの巧妙な手腕と豪胆さによって、きみは彼を捕らえたのだ。 「空き家」
 名声など、かくのごとしだ。 「空き家」
 自分で判断したことを信用してはならない。 「ノーウッドの建築士」
 どこで絵筆を置くのかを判断するという、画家にとって最も重要な才能が彼には欠けていた。 「ノーウッドの建築士」
 人知で考案できたことは、人知で解明できるものだ。 「踊る人形」
 悪事に加担した埋め合わせはしたと思う。 「孤独な自転車乗り」
 将来のことが保証された今、過去のことにはもう少し寛大になってもよい。 「貴族学校」
 常に別の可能性を探り、備えておくべきだ。 「黒ピーター」
 絶望の淵にある淑女に助けを求められたら、紳士たるもの、危険を顧みるべきではない。 「チャールズ・オーガスタス・ミルバートン」
 自尊心と名誉にかけて最後まで戦うつもりだ。 「チャールズ・オーガスタス・ミルバートン」
 きみはきみの線を、ぼくはぼくの線をたどろうではないか。 「六つのナポレオン」
 一度は深みにはまったが、この先どこまで高みに上れるか、私に見せていただきたい。 「三人の学生」
 シャーロック・ホームズ氏が欠けている。 「金縁の鼻眼鏡」
 少しだけ慎重かつ巧妙に策を練れば、目的は達せられるものだ。 「スリー・クォーターの失踪」
 特別な知識や能力を備えていると、簡単な説明よりも難しい説明を求めたくなる。 「アベイ農園」
 無条件でのお約束はできません。 「第二の血痕」
 この三日間のできごとで、ただひとつ重要だったのは、なにごとも起きなかったということだ。 「第二の血痕」
  
第七章 『恐怖の谷』
 確かにきみは自分自身を見くびっているね。
 時代に先走ると、往々にして損をすることがある。
 ともあれ、自分で正々堂々だと考えているにすぎないが。
 他人をだしにして点数を稼ごうと思ったことはない。
 自分の考えが正しいと得心できるまで、口外せずに熟慮する。
  
第八章 『最後のあいさつ』(短編集)
 落馬するために乗馬するようなものだ。 「ウィステリア荘」
 運よく見つかったとはいったが、捜し出そうとしなかったら、見つからなかっただろう。  「ウィステリア荘」
 苦悩と暴力と恐怖は、なにゆえに結びつくのだろうか。 「ボール箱」
 絶えざる難題に悩む人間の叡知は、常に解答からはるか遠くをさまようのだ。 「ボール箱」
 金も名声も得られないが、解決してみたいのだ。 「赤い輪」
 暗闇に光明を見たが、消えるやもしれぬ。 「ブルース・パティントンの設計書」
 峰を越えても次の峰が立ちはだかっているだけだ。 「ブルース・パティントンの設計書」
 きみがいわれたとおりにしてくれれば、ぼくには一番助かるね。 「瀕死の探偵」
 失敗するのは人の常だが、失敗を悟りて挽回できる者が偉大なのだ。 「フランシス・カーファックス嬢の失踪」
 生きた彼女に会えるのは絶望的だったが、可能性は皆無でもなかった。 「フランシス・カーファックス嬢の失踪」
 超常現象だと結論する前に、通常の現象だと説明できないか、調査しなければならない。 「悪魔の足」
 この事件は首を突っ込むように求められたものではなかった。 「悪魔の足」
 明日になれば、ただの嫌な思い出にすぎなくなる。 「最後のあいさつ」
 時代は移りゆくとも、きみだけは少しも変わらない。 「最後のあいさつ」
 嵐が去ったあと、照り輝く光の中、もっと美しくて素晴らしく、たくましくなった国がそこにはあるだろう。 「最後のあいさつ」
  
第九章 『シャーロック・ホームズの事件簿』(短編集)
 ある種の愛想のよさは、粗野な者たちの暴力よりも危ういものだ。 「高名な依頼人」
 可能性がないものをすべて除外したら、いかに可能性がなさそうでも、残ったものが真実だ。 「白面の兵士」
 理性的になれば取引もできるだろう。 「マザリンの宝石」
 あなたの聡明さを過少評価していたようです。 「三破風館」
 きみを知り尽くすことはできないね。 「サセックスの吸血鬼」
 それはゆがんだ愛、極端に偏執的な愛なのだ。 「サセックスの吸血鬼」
 正面から猪突猛進するのが、最善の策ということもある。 「三人のガリデブ」
 整合性が欠けていれば、なんらかの欺瞞を疑わねばならない。 「ソア橋」
 あなたが事実を見つければ、他の者が説明できるでしょう。 「ソア橋」
 あとから知恵者になるのは簡単だ。 「ソア橋」
 自然に打ち勝とうとすれば、往々にして自然に打ち負かされるものだ。 「はう男」
 捜していた大事なものが、そこにあるとわかっているのに、手を伸ばしても届かない。 「ライオンのたてがみ」
 もしも不幸に埋め合わせがないのならば、この世はあまりに残酷な茶番劇だ。 「ベールの下宿人」
 忍耐力のある者が存在すること、それ自体が、忍耐力のない世の中において、なにより貴重な教訓となる。 「ベールの下宿人」
 行為の道義性や妥当性については、意見を述べる立場にない。 「ショスコム荘」
 人生なんて虚しくつまらないものではないのかい。 「引退した絵具屋」
 
終 章  勉強に終わりはないね、ワトソン。
 
あとがきにかえて

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