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書籍紹介

日本の「英文法」ができるまで

日本人の英文法はいかにして成立したのか
著者 斎藤浩一〔著〕
刊行日 2022年5月24日
ISBN 978-4-327-41106-0
Cコード 1082
NDCコード 807
体裁 A5判 並製 234頁
定価 定価2,750円(本体2,500円+税10%)

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内容紹介
幕末に欧米列強から自国を守るために始まった英語学習において、なくてはならないもの、それは英文法であった。幕末から明治にかけて、日本人はどのように海外から英文法を受容し、それを作り変えて、自らに合った英文法の体系を完成させたのか。その後、当時の人々の英文法観はどのように変化していったのか。英文法による学習に異を唱える民間企業と擁護する英語教育界の反応も含め、「英文法」をめぐる歴史を丹念にたどる。
 
<著者紹介>
斎藤浩一(さいとう こういち)
1983年東京生まれ。拓殖大学政経学部准教授。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻、博士後期課程を修了。東京海洋大学海洋工学部准教授を経て現職。専門は日本英学史。
主な業績として、「明治期後半から大正初期における英文法教育史:英文法擁護論と、「英語教育」内における理論化過程を中心に」(『日本英語教育史研究』28、2013年)、「英語界と戦争責任・戦後民主主義:中野好夫と市河三喜の衝突(1948年)への再解釈を通して」(『英学史研究』53、2020年)などがある。
目次
まえがき
 
序章 はじめに
 中学生時代の思い出
 わからなかった「現在完了」
 江川泰一郎『英文法解説』に見る「現在完了」
 日本の「学習英文法」=英米で用いられた規範文法の改変版
 
第1部 ヨーロッパにおける文法研究の歴史――日本の「学習英文法」前史
 第1章 ギリシア語文法からラテン語文法へ――古代〜中世
  1.1 世界史の流れから見る「学習英文法」
  1.2 古代ギリシアの文法研究
  1.3 アレクサンドリアでの文法研究
  1.4 ローマ帝国の興隆
  1.5 ラテン語とキリスト教
  1.6 宗教と学問の言語としてのラテン語
  1.7 ラテン語文法の世界
  1.8 権威を失うローマ・カトリック教会と、宗教改革
  1.9 英語の整備と改良に向けて
 
 第2章 規範英文法の確立に向けて――16〜18世紀
  2.1 英文法の誕生――16世紀
  2.2 錯綜する英文法体系――17世紀
  2.3 「規範」への遠い道のり――挫折したアカデミー設立運動
  2.4 解消されない混乱――18世紀の英文法
  2.5 規範英文法の一応の成立
 
第2部 「学習英文法」体系はいかに作られたか
 第3章 日本人と英文法との出会い
  3.1 ラウスの規範と合理主義
  3.2 18世紀後半の技術革新と工業化
  3.3 イギリスのアジア進出
  3.4 フェートン号事件の衝撃と英語学習
  3.5 日本最初の英語品詞論――『諳厄利亜語林大成』
  3.6 漢学にもとづく品詞理解
  3.7 「蘭学」の勃興
  3.8 日本における(蘭)文法研究の祖――中野柳圃
  3.9 引き継がれる中野柳圃の学統――馬場佐十郎と吉雄権之助
  3.10 相次ぐ英米船の出没
  3.11 アヘン戦争の衝撃
  3.12 「兵学」としての「英学」
  3.13 “武器”としての英文法――日本最初の本格的な英文法書・『英文鑑』
  3.14 リンドレー・マレー
  3.15 マレーの文法
  3.16 マレーとラウスの文法の比較
  3.17 『英文鑑』の歴史的位置づけ
 
 第4章 本格化する英文法の「作り変え」――幕末〜明治初年期
  4.1 蘭学から英学へ
  4.2 幕末英文法の中心・『英吉利文典』
  4.3 引き継がれる「英学」――明治初年期
  4.4 明治初年期における英文法――ピネオとカッケンボスの文法書
  4.5 『英吉利文典』、ピネオ、カッケンボスの文法書の内容
   4.5.1 品詞論の内容
   4.5.2 『英吉利文典』および、ピネオとカッケンボスの文法書の特徴
  4.6 舶来の英文法を「活用しつづける」
  4.7 舶来の英文法を「作り変える」
  4.8 フランシス・ブリンクリーと『語学独案内』
   4.8.1 『語学独案内』の内容
   4.8.2 『語学独案内』の歴史的位置づけ
  4.9 ブリンクリーの多方面にわたる活動
  4.10 ブリンクリーの英文法教育への思い
 
 第5章 英文法体系の進展――明治10〜20年代
  5.1 つづけられた独立までの努力
  5.2 輸入されたブラウン、スウィントン、ベインの文法書
   5.2.1 引き継がれた規範英文法の枠組み
   5.2.2 もたらされた体系上の進展
  5.3 継承される「作り変え」の動き
  5.4 明治中期における文法書の著作家たち
  5.5 輸入されたインド人向けの英文法書
  5.6 加速する「作り変え」の動き
 
 第6章 「学習英文法」体系の完成――明治30年代
  6.1 終焉に向かう「英学」
  6.2 時代転換期における、「学習英文法」の一応の完成
  6.3 「学習英文法」と「イディオモロジー」
  6.4 斎藤秀三郎の略歴
  6.5 斎藤による文法観の転換
  6.6 精密な意味分析と連動した横断的解説
  6.7 斎藤秀三郎の動詞論――態、時制、法、助動詞、動詞の型
  6.8 「使役動詞」と「知覚動詞」の誕生
  6.9 「全否定・部分否定」、「形式主語/目的語」、「意味上の主語」の誕生
  6.10 「分詞構文」の誕生
  6.11 もう1つの「作り変え」――日英対照論
  6.12 斎藤秀三郎とブリンクリー
 
第3部 「学習英文法」はいかに意味づけられたか
 第7章 英文法の学習・教授法小史――幕末〜明治40年代
  7.1 2人の英語教師の嘆き
  7.2 「英学」を支えた私塾
  7.3 慶應義塾における読書法
  7.4 「素読」と「会読」
  7.5 文法理論偏重型の学習法
  7.6 広く行われたパーシング
  7.7 「学」から「教」への転換
  7.8 相次ぐ「英語教授法」書の出現
  7.9 英文法「教授法」改革の動き
  7.10 唱導される帰納的「教授法」
  7.11 制度化された帰納的「教授法」
 
 第8章 英文法排撃論の興隆――明治30〜40年代
  8.1 熱を帯びる英語「教授」・学習論
  8.2 英文法排撃論の登場
  8.3 英文法と「小供・習慣」
  8.4 英文法をめぐる混乱
  8.5 窮地に立たされる英文法
  8.6 民間の英語産業の動き
  8.7 「商権拡張の一武器」となった英語
  8.8 実業界に進出しはじめる「学校出」青年たち
  8.9 「学校出」に要求された「実用英語」
  8.10 学卒者の英語力への不満
  8.11 「実業家の教育家に対する要求」
  8.12 就職と直結する「実用英語」
  8.13 第1次世界大戦と「大戦景気」
  8.14 浸透する「実用英語」
  8.15 「実用英語」と英文法排撃論
 
 第9章 英文法排撃論への反論活動――明治30〜40年代
  9.1 実業界関係者による英文法排撃論
  9.2 英文法擁護論の一例――生田長江による反論
  9.3 窮地に立たされる斎藤秀三郎
  9.4 斎藤の門下生たちによる英文法擁護論
  9.5 「英文法」とブリンクリー
  9.6 「普通教育」における英文法の意義
  9.7 英文法をめぐる論争のまとめ
 
 第10章 「英語教育」の手段となった英文法――明治40年代
  10.1 英文法と「英語教育」、そして「英語教育」と「国語」・「国民」
  10.2 「英語教育」への胎動――「教授法」から、英語科の目的論へ
  10.3 目的論者たちの共通点
  10.4 明治教育学の歩みと、「教育」の意味
  10.5 「教授」に期待された「実用と教養」
  10.6 「実用と教養」を表す様々な言葉
  10.7 「英語教育」の誕生――岡倉由三郎著『英語教育』(1911)
  10.8 教養・国家・「国語」・「英語教育」
  10.9 英文法と「英語教育」
  10.10 なぜ「読書力の養成」が「実用的価値」とされたのか
  10.11 「読本」にもとづく帰納的文法「教授法」
  10.12 抽象的思考訓練の具としての英文法
  10.13 「国語」・「国文法」への省察をもたらす具としての英文法
  10.14 文化創造型教養主義語学の体制としての「英語教育」
 
終章 おわりに――中間的メタ言語となった「学習英文法」
 
あとがき
 
参考文献
索引
図版提供

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